コスモスの記憶
「えっ―――?」
直月の突然の告白に秋桜は目を見開いた。
「もしも、万が一俺が生きて帰って来ることができたらあきの気持ちも聞かせてくれないか?」
「えっ………?なお―――っ!!私は…」
「じゃぁ、なっ……。」
「なおっ―――!!」
その言葉を最後に直月は赤く光る方へと駆け出していった。
「なおっ、待って、なお!!」
秋桜は叫んだが、その声は直月に届かなかった。
「馬鹿なお………。
自分だけ言いたい事言って、私の話をちっとも聞いてくれない………。」
秋桜は、大粒の涙を流ししゃがみこんだ。
「わたしだって…………
なおのこと好きなのに………―――。」
その小さくか細い声は誰にも届いてはいなかった。
そして、秋桜は涙をぬぐい立ち上がった。
「生きて………。生きて帰ってこい。
なお………。私は…、私に今できることをする。」
あたりを見回してから、秋桜は苦しんでる人達の下へとかけていった。
それを知るのは、幾千も咲く花の中で、より輝きを増していたコスモスの花だけだった。