コスモスの記憶
「相変わらず、ホストの仕事忙しいみたいだね。」
そんな薫の様子を見てアオは呆れたような顔をしながら言った。
「まぁな、俺ってば売れっ子だから。」
「まったく……。そんなんじゃいつか紫ちゃんに愛想つかれちゃうよ?」
薫のそんな様子を見て、アオは薫の彼女の”紫”(ゆかり)の名前を出した。
紫は、落ち着いた美人な容貌の人でアオもすごく慕っていた。また、美人なのにも関わらず気取った態度もなく、たまに抜けている所があるところが可愛くてアオも大好きな存在だ。
「大丈夫だって。紫はそこんとこ理解してくれてるんだから。それに、あのクラブはもともとあいつの兄貴の店だしな。春からは俺もホスト辞めて会社への就職決まってっから、その辺は安心してるだろ。」
紫の話をするときの薫の顔は優しく穏やかなものだ。薫と紫は、中学からの同級生で長い付き合いだ。もう10年近い付き合いで、来年には結婚の話も出ている。
「しかし、ほんと薫ちゃん丸くなったよね。
数年前まで、暴走族の頭なんかしてやんちゃしちゃってたのに。」
「ははは。今や懐かしい思い出だな。」
「そんな薫ちゃんに付いてきた紫ちゃんは心底すごいと思うよ。」
「愛の力だな!!」
「よく言うよ、馬鹿兄貴。」
そんなやり取りがおかしくなって、2人の顔には笑みの表情が浮かんだ。