コスモスの記憶
「また、新しい爆発が起きたようですね。私も行ってこれ以上の被害を阻止せねば………。秋桜様も早く安全な場所へ。そして、傷を癒してあげてください。」
「でも……っ。」
なかなか歩を進めようとしない、秋桜に直月は意を決した様に言葉を告げ始めた。
「最後に私のわがままを聞いていただけませんか?」
「………えっ?」
「………―――あき。」
直月が”あき”と呼んだ事に驚いて目を見開いた。
「………なお?」
「これが最後になるだろう。最後だけでも”あき”と呼ばせてくれないか?」
「最後だなんて………」
「あき?聞いてくれないか?」
「………―――っ。」
相変わらず背を向けたままではあるものの、その声は真剣そのもので、昔と同じ喋り方に戻った直月に秋桜は黙りこんでしまった。
「………ありがとう。
なぁ、あき。さっきも言ったが、ここの花はいつ来ても綺麗だとは思わないか?綺麗に整然と立っている。お前の名前と同じ、”秋”に”桜”と書く『コスモス』の花もまた綺麗に咲き誇っているな。」
「………。」
「俺達が初めてあったのも、この花畑だったよな?2人共まだ子供で、ここで遊びはしゃぎまわってた。今じゃ、俺はただの職人。お前は国のお姫様だ。」
「………。」
「でも、お前は大人になった今でも俺に昔と変わらずに接してきてくれる。もちろん俺だけじゃなく他の人間にもだがな。でも、それが俺にはすごく嬉しかった。」
「………。」
「それに俺が作る物にいつだってお前は笑顔で喜んでみてくれていたよな?
”あの人”の元に行ってほしくないというのは国の者の考えといったが、本当は私の願望だったのかもしれないな。」
「えっ………?」
「俺はお前に行ってほしくなかった。」
「―――……っ。」
「だから、こうなってよかったと思ってるんだ、俺は。俺は初めてお前を守ることができる。」
話を聞いて驚いている秋桜の顔を振り返り一度見ると、直月は再び振り返り前を見据えた。