スキで溢れさせて
「……来たぞ」




声がした方を見れば片足に体重をかけて立っている黒髪の男がいた。




愕然した。





だってコイツもカッコいい顔立ちだから。





「コイツか。例の川瀬って女は」




顎であたしを指す。



それに答えるようにうなずく。




「ふーん」




舐めるように上から下、下から上を見て顔の前で視線が止まった。




自然と背筋も伸びて冷酷な眼差しに心臓が飛び跳ねた。




そして一言。






「凡人だな」




フッと憎たらしい笑みを残してあたしを素通りしていった。




まさかの発言に動けずにいた。




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