繋がれた天使〜Siori and Mitsuki〜
プロローグ
2002年
3月上旬―――
暦の上では春。
といっても
雪国と呼ばれるこの地方都市は、春はまだ遠い。
車道の端に雪が残り、吐く息も白い。
街は、まもなく始まるサッカーW杯の話で持ちきりだ。
サッカーの試合はこの街でも行われるらしい。
が、俺はその半ば浮かれた雰囲気についていけず、タバコの煙とため息を一緒に吐き出す――。