繋がれた天使〜Siori and Mitsuki〜
「浮気ってした事ある?」
唐突な問い掛けに、
「…無いよ。」
嘘をついた。
「ホントに?」
栞が俺の嘘を見透かしたかのように、もう一度確かめる。
「…ごめん、嘘ついた。
一度だけある…。」
「うちの大学は数人の班ごとに
教育実習に行くんだけどさ、
その時同じ班だった子と…。
でも、なんにも知らないで
ニコニコ笑ってる彼女見たら、
胸が痛んでさ…。
それからは、一度もしてない。
あ、それから、風俗も
彼女いる時は絶対行かない。」
これは嘘じゃない。
「そうなんだ…。
彼女の事、凄く好きだったんだ
ね。」
少し寂しそうに栞は言った。
「うん…付き合った中で唯一結婚
したかった人だ。」
正直に言ってしまったあと、
慌ててこう付け加えた。
「でも、それはだいぶ昔の話で、
その彼女はもう他のヤツと
結婚しちまったし。
今は栞だけだから。
ホントだから。」
この言葉に偽りはなかった。
「うん…ありがと。」
小さなキスをしたあとで、
栞はシャワーを浴びてくるからとベッドを出た。
俺は、後ろ姿をぼんやり見ながら
(昔の彼氏にひどい浮気でもされたのかな?)
って考えてた。
あ…ネックレス、まだ渡してないや…。
思い出したが、心地よい疲労感に
そのまま眠りに落ちてしまった。