繋がれた天使〜Siori and Mitsuki〜
俺は栞に何かを言いかけて、
でも何も言えなかった。
出会った時の気持ち。
初めてデートした時の気持ち。
ひとつに溶け合った時の気持ち。
栞が結婚してると聞かされた時の気持ち。
会えなかった時の気持ち。
そして今の気持ち。
色んな感情がどんどん溢れてきて
かえって言葉にならない。
黙ったまま、栞を背中から抱き締めた。
「馬鹿…」
心のどこかではこうなる事を望んでいたのに、俺は栞に「馬鹿」を繰り返した。
出会った頃はまだ肌寒かったのに、いつのまにか汗ばむ季節。
ショートカットだった栞の髪も、
少しだけ伸びていた。