繋がれた天使〜Siori and Mitsuki〜
それと。
俺は、
栞が両親や実家の話をするのを
聞いたことが無いのに気付いた。
「栞、あのさぁ。
俺、栞の親に
一応挨拶しといた方が
よくないか? 」
とたんに、栞の顔から笑みが消えた。
「別に…挨拶なんていいよ…」
「だってさ、
一緒に暮らす事になったんだし
こういう関係になった以上、
挨拶は必要だろ?
事後報告だけどさ…」
俺は不思議に思って訊ねてみた。
「親とは何年も会ってないし…
あんまり仲良くないから…」
「でもさ…」
「いいのっ!
親には会いたくないしっ!」
いつになく強い口調で
言い放つ栞。
眉間にしわを寄せて一点を見つめる瞳は、どことなく曇っている。