繋がれた天使〜Siori and Mitsuki〜


それと。


俺は、
栞が両親や実家の話をするのを
聞いたことが無いのに気付いた。




「栞、あのさぁ。
 俺、栞の親に
 一応挨拶しといた方が
 よくないか? 」





とたんに、栞の顔から笑みが消えた。



「別に…挨拶なんていいよ…」



「だってさ、
 一緒に暮らす事になったんだし
 こういう関係になった以上、
 挨拶は必要だろ?
 事後報告だけどさ…」


俺は不思議に思って訊ねてみた。




「親とは何年も会ってないし…

 あんまり仲良くないから…」



「でもさ…」


「いいのっ!
 親には会いたくないしっ!」


いつになく強い口調で
言い放つ栞。


眉間にしわを寄せて一点を見つめる瞳は、どことなく曇っている。

< 134 / 163 >

この作品をシェア

pagetop