繋がれた天使〜Siori and Mitsuki〜

行くあてもなく
車をただ走らせる。


『釣った魚に餌をやらない』



俺…ずっと前にも言われた事が
あったんだ。




――教師になりたてで、
夢も希望もてんこ盛りだった頃。


それに比例するように、
仕事も山盛りだった。


仕事の他に、新人の教師には、
通称『初任研』という研修もあって。


だから休みなんて、
あって無いようなもんだった。



遠距離恋愛になってた当時の彼女
美保の相手なんて、当然ろくにできる筈もなく。


美保が
会いに来るって言ってくれても、
忙しいから来なくていいと断った。



俺は美保に
寂しい思いさせてしまったんだ…。



たまに美保が都合をつけて
会いに来てくれても、
連れてくのはパチ屋ばっかで。




――美保が他の男と浮気した時、
俺は美保を強く責めたけど、
悲しい目をして美保は俺に言ったんだ。



『光基は
 釣った魚に餌をやらないから』

って。

< 143 / 163 >

この作品をシェア

pagetop