繋がれた天使〜Siori and Mitsuki〜
…ミチルちゃん
休みなのか……。
俺は、アポ無しで来たのを少々後悔しながら、タバコに火を点けた。
わざと薄暗くした照明や、深く暗い血の色をしたビロードのカーテン。
カーテンと同じ色のソファ。
手すりが金色の、変に凝った造りのベッドに、何より病院の診察台のような開脚イスが、SMクラブらしさを醸し出している。
日常から完全に遮断された空間。
駅前の喧騒とは裏腹に、
隔離されたように一種独特な時間が流れる。
いや――
此処だけが切り取られたように、時間が止まっているようにも感じられる――
妖しく淫靡な場所。
…此処とも…もう…
ソファに腰掛け、そんな事を考えながら、俺はタバコの煙を燻らせていた。