繋がれた天使〜Siori and Mitsuki〜


居酒屋で

だいぶ打ち解けた俺達は

その後

居酒屋から歩いて数分の

この街で一番高いビルに昇った。



最上階の展望スペースからは

さっき通ってきた悠久橋周辺の

景色が

一望にできる。




ちょうど

カーフェリーの出航時間らしく

フェリーは船首をゆっくりと

海側に向けて

方向転換している。



「今フェリーが出てくよ。

 綺麗だねぇ。」


あすかがため息まじりに

呟く。





田舎を飛び出して大学に入って…

そして

縁もゆかりもなかったこの街で

働き初めて8年…。


俺は明日、この街を去る。



(この夜景を見るのも

 これが最後なのかな…)


ふと口を突いて出た言葉に

あすかが返す。



「最後に…しないでよ。

 また見においでよ。」



「そしたら、その時は

 また隣にいてくれる?」

「ん。」


あすかは自分のおでこを

俺のおでこにくっつけてきた。



俺とあすかは

どちらからともなく

キスをしたんだ。


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