天☆地戦争
大樹に辿り着くと、メドゥーサは大きく深呼吸した。
『ホント…いい天気だねぇ〜。』
そして、赤子を抱いたまま、草原の上に座った。
のんびりと空を見上げるメドゥーサをイヴは冷ややかに見つめていた。

(今のうちに幸せを噛み締めておくといい…。今の幸福が惜しければ惜しい程、地に落ちたときの地獄は、堪え難い苦痛だろうね。)
メドゥーサを鼻で笑ったイヴは、満面の笑みをつくり、彼女に近づいた。
『ねぇ、メドゥーサ。アタシも赤ちゃん抱かせてよぉ。』
両手を差し出したイヴに、メドゥーサは快く赤子を抱かせてくれた。
『あはっ♪可愛い〜♪』
我が子を誉められて、メドゥーサもうれしそうだ。

イヴは、くるりと反転すると、大樹に近づいて行った。
『ねぇ、メドゥーサ。この木になってる実、何かしってる?』
イヴの問いに、メドゥーサが大樹を見上げる。
『この赤い実かえ?…さぁ?…何なんだい?』
困惑したメドゥーサの顔が覗き込む。
その様子に、イヴはニコリと笑顔になった。
『これは…“知恵の実”。コレを食べたものの願いをひとつダケ叶えてくれるンだって。』
『へぇ…。面白い実だねぇ。』
メドゥーサは、もの珍しそうに知恵の実の側面をそっと撫でた。
『…ねぇ。食べてみない?』
『え?』
横を見ると、イヴの笑顔が飛び込んできた。
『赤ちゃんが元気に育ちますように、って願いを込めてさ!』
イヴはそう言って赤子を優しく撫でた。
メドゥーサは視線を我が子に落とした。
何事もないように、穏やかに眠る我が子。
『そうだねぇ…。この子の幸せを願うなら…。』
イヴは、大樹から知恵の実をちぎり採ると、メドゥーサに手渡した。
メドゥーサは知恵の実を受け取ると、それをそっと噛った。

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