天☆地戦争
メドゥーサは目の前に蠢き形づくった物体を信じられないでいた。

《嗚呼…なんと嘆かわしいコトだ…。
望まれて生まれ落ちなかった者よ…。お前は、とうとう神にまで反するか!!》
空に浮かぶ人型の雲は、荒々しく言い放った。
メドゥーサは目を見開いた。
『反する…?アタシがかえ?いつ反したと言うんだぃ!?』
震える体を必死に押さえ込み、神と向き合う。
《なぜ“知恵の実”を口にした!!なぜ禁忌を犯すのだ!?
大人しくしておれば、そのままでいられたものを…。》
メドゥーサは素早くイヴを見た。
怪しく笑いを浮かべるその表情に、恐怖で顔が歪んだ。
《まぁ、よい…。もともと存在しえない者だ…。
さぁ!!罪人よ!罰を受けよ!!
お前が大切に思うものを汝に捧げよ!》
イヴの掲げた赤子が金色の光沢を放つ。
『やめて―――ッ!!』
メドゥーサは、甲高い叫びをあげながら、必死に駆け出した。

(失いたくない!我が子を…!アダムとのたった一人の子…!)

メドゥーサは泥だらけになりながらも必死に前に進んだ。我が子を取り戻すために…。

(あと少し…)

手が我が子に触れようとしたその瞬間、赤子は閃光に包まれ、天に昇っていった。
メドゥーサは、愕然としてその場に膝をついた。
頬を大粒の涙がつたる。
傍らでは、イヴが優越感にひたり、大声をあげて狂ったように笑っていた。
その笑いに、メドゥーサは拳を固く握り、地面を力任せに殴りはじめた。

悔しさ、無力さ、様々な感情が拳に含まれていた。

しかし、どれだけ悔やもうと、我が子はもうかえってこない…。

< 105 / 124 >

この作品をシェア

pagetop