天☆地戦争
老婆はズダズダの体を必死に剣で支えていた。
体が重い…息も大分あがっている…そろそろ仕舞いだな…。
「どぅしたよ、ババァ!!そろそろ仕舞いか?」
赤毛の男…アダムが刀を地面に突き刺し、煙管を吹かしながらノアを挑発した。しかし、そのアダム自身も表面上は余裕を見せているが、体は悲鳴をあげていた。
「アダムよ…主は、何とも思わぬのか?この悲劇の戦争を、まだ幼き子達に託すことを…何とも思わぬのか!?」
ノアは声を振り絞ってアダムに問い掛けた。
しかし、しばらくしても、アダムから返答がない。ノアは、彼を横目で見た。長髪に隠れて目こそよく見えなかったが、わずかに口元だけ見て取れた。…口角があがっている…。ゆっくりと彼の手が自分の顔を覆った。片手は腹をかかえ、体が小刻みに震えだした…。その直後、堪えきれないと言わんばかりに、彼は含んでいた息をハッと吐き出した。そして、狂ったように高々と笑いだした。彼の不気味な笑い声が、草原いっぱいに響き渡った。
背から何やらはい上がってくるような鳥肌が、ノアの全身を覆った。額の汗が頬をつたる。
崖の上に立った子供達は、何が起きてるのか理解できないままでいた。ただ、全身にわけのわからない鳥肌が立つのを感じた。
「アッハハハハ!!…ハッ…。アンタって…ホンットに何もわかってねぇよなぁ…。」
彼は、腹をかかえ、必死に喉で笑いを抑えていた。肩が小刻みに震えている。
「神は、アダム、ノア、メドゥーサの3つの人類に争いを与えたんだよ。わかるか??『生き残りし者に大地を与えよう』、なんて言葉は所詮はただの餌だ!!神は愚かな俺達に互いに殺し合えってお告げを残したんだよ!!」
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