天☆地戦争
アダムは自室のベッドで仰向けになりながら煙草を吹かしていた。
「意地悪だねぇ。御老公が可愛そうだよ。」
ギルバードの声にアダムはパチリと片目を開けた。
困り笑顔をアダムに向けながら、ベッドの側に立ち彼を見下ろした。
「そ?」
素っ気ない返事を返すと、アダムはまたパチリと目を閉じた。
「『たとえ仲間が倒れようとも』…か。なぁ、アダム…」
ギルバードは、アダムが寝転がっているベッドに腰掛けた。
「悪いけど、僕は君を踏み越えて進めない。」
ギルバードはアダムに目をくれず、じっと床を見つめた。
「君がいない世界に生きても意味がない…。君のいない世界なんかで生きても、僕にとっては苦痛で仕方がない。」
「……。」
目を閉じたまま、アダムはギルバードの言葉に耳を傾けた。煙草がジリジリと燃えている。
「だから…僕は死んでも君を守るよ。そして、君を勝利に導く…。相討ちなんて…絶対させない…!!」
彼の拳に力が入る。体が小刻みに震えた。
気を落ち着けるために小さく呼吸を整えた。
「僕が、君を…」
ギルバードはゆっくりと顔をあげた。
「新世界の『王』にする!!」
言い放った彼の目に、闘志が漲っていた。
ギルバードは、サッと立ち上がりアダムの部屋を後にした。
自室のドアが完全に閉まる音を確認すると、アダムはパチリと両目を開き大きくため息をこぼした。

起き上がるために体を揺らしていると、ギルバードが出ていったばかりのドアから、伝令兵が勢いよく飛び込んできた。
驚きのあまり、アダムは忙しく瞬きをした。
「で…伝令!!西の空にノアの方舟を確認!!着陸態勢をしている模様!!」
アダムはしばらく、動きを止めてキョトンとしていた。
ようやく状況を飲み込めると、ゆっくりと口角があがっていった。
「O.K〜♪」
アダムは、素早く立ち上がりマントを翻しながら颯爽と皆の前に姿を現した。
兵全体に緊張が走る。
アダムは腰にぶら下げてある先代の形見の刀を抜き取り、矛先を方舟に向けた。そして、大きく息を吸い思いきり吐き出した。
「迎え撃てぇぇっ!!!」

割れんばかりの地鳴りが大地に響き渡った…。
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