天☆地戦争
「よぉ!アダム!!」
叫び声は、大群の轟き声の一瞬の隙をついて草原に響き渡った。
大群が一瞬にして静まりかえった。
アダムはゆっくりと顔をあげると、無表情で崖のうえを見上げた。
「いつまで本陣に居座る気だ?いい加減出てこいよ、このチキン野郎!」
メドゥーサはニヤリと口角をあげ、不適な笑みをアダムに向けた。
アダムは、相変わらず無表情のままタバコをふかしている。
アダムの様子が気になったギルバードは、白衣を身に纏ったまま、仮設医療テントから飛び出してきた。
「アダム…」
ギルバードは、無表情のまま見上げるアダムを心配そうに見つめた。

「ねぇ…」
メドゥーサは目を細めニヤリと笑みを浮かべた。
「僕と遊ぼうよ、アダム♪」
言い終えると、メドゥーサはヒラリと崖から舞い降りていった。
突然の行動に一瞬気を取られていたガイアは、我に返ると慌ててメドゥーサの後を追った。
その様子を眺めていたアダムの口角が、ゆっくりとあがりはじめた。

ギルバードは、全身に鳥肌が駆け抜けるように立つのを感じた。

嫌な予感がする…

蠢く人々を押し避けながら、ギルバードはアダムの方へ必死に駆け出した。
アダムは、近くにいた衛兵に何やら話し掛けるとコートを翻し人々の渦に飲み込まれて行った。
ギルバードはやっとのことでつい先程までアダムが立っていた場所まで辿り着いたが、アダムの姿を見失ってしまった。
必死に辺りを見回したが影一つ見つからない。
息を切らしながら、先程アダムが話し掛けていた衛兵に声をかけた。
「アダムは…どこに?」
一等兵に指示を出していた衛兵はギルバードに気付くとサッと素早く敬礼の姿勢をとった。
「Dr.ギルバード!お疲れ様です!!アダム様は、納屋に向かわれましたが…。」
ギルバードは眉を潜めた。
なぜ、納屋なんかに…?

「アダムは、君に何と?」
気を取り直して再び衛兵に尋ねた。
「はっ!アダム様がおっしゃるには、『今メドゥーサが中央に降りた。ノアも直に中央に到達する。爆破の用意をしろ。10分後には全てを終わらせる。』とのことで。」
ギルバードの表情が凍り付いた。

全てを終わらせる…!?
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