天☆地戦争
「点火っ!!」
大声とともに、アダムが黒鹿毛の馬にまたがりギルバードの頭上を飛び越えていった。

ギルバードはポカンと口をあけてその様子を呆然と眺めていた。
着火の音に我に返ったギルバードは、
「や…止めるんだ!!火を消せ!!」
と慌てて叫んだが、火は導火線を瞬く間に駆け抜けていった。
走っても追い付けない。
アダムは導火線の火とともに草原の中央目がけて駆け抜けていた。
「なんてことを…!」
ギルバードは拳を潰れんばかりに握り締めた。
悔しさで体が奮えたった。次の瞬間には、無意識に足が動きだしていた。

追い付けないのはわかっている…
でも、それでも!何かしないと気が治まらない!
アダムを…死なせたくない!!


馬にまたがったアダムは導火線の火を右手に眺めながら、後ろを振り返ることなく走り続けた。

ギルは…怒ってんだろうなぁ…

アダムはフッと物悲しい笑みをこぼした。
「悲しいの?にぃ〜にぃ。」
突然背後で聞き慣れた甘えた声が飛んできたので、アダムは危うく口に加えた煙草を落としそうになった。
「おま…なんで乗ってんだよ、イヴ!!」
慌てて振り返ると、満面の笑みを浮かべたイヴが馬の腰にチョコンと腰掛けていた。
「にぃ〜にぃが行くトコ、イヴも一緒に行くっちゃ♪」
あまりに無邪気な笑顔だったので、呆れて笑いしか出てこなかった。
「ハハッ…もぅいいや。一緒に行くか。」
再び前を向いたアダムは、もう二度と振り返ることはなかった。

…爆発まで残り5分…
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