天☆地戦争
「おぃおぃ、食べんじゃねぇぞ。」
ノアは、背後から飛んできた声に思わず手を止めてしまった。

「また、洪水になったら洒落になんねぇからな。」

どっかで聞いた、聞き覚えのある声…

ノアはゆっくりと振り返った。
振り返った目先には、木陰にふてぶてしくつっ立っているメドゥーサの姿があった。
ノアは瞳孔を開き、瞬時に後ろに下がり構えた。
腰に手をあて、剣を探った。
…が、一向に手触りがない。
不思議に思ったノアは、腰に目を落とすと、瞳を見開いた。

…ない!!お婆様の形見の剣が…!

ノアは額に汗が沸き上がるのを感じた。
後退りしながら、ゆっくりと顔をあげると、身動き一つしないメドゥーサの姿が目に入った。

…あれ?なんか様子が変…
「何で…攻撃してこないの?アタシは見ての通り丸腰…。殺すチャンスじゃない?それとも、丸腰相手に殺す気が起きないなんて変な情けでもあるのかしら?」
汗が頬をつたる…。口調は冷静でも、体はやはり正直だ。

ノアの強気の発言に、メドゥーサはため息をこぼした。
「ふざけんな。んな情けなんかあるかよ。

  …ねぇんだよ。」
ノアは眉間にシワを寄せ、困惑の表情を浮かべた。
メドゥーサのため息が大きくなる。
「だから!!ねぇんだよ!オマエを殺す術が!!おっこっちまったんだよ、僕の杖!!」

ノアの目が点になった。空気が一瞬止まった…。


「…ぷっ…


アッハハハハッ!!」
堪えきれなくなったノアの甲高い笑い声が森中に響き渡った…。
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