天☆地戦争

「ディヴァイア…。」

メドゥーサの声のトーンが下がった。
ディヴァイアを見つめる目が、どこか冷たい。

「そんなに睨まないでくださいよ、メドゥーサ。」

当の本人はさほど気にしておらず、嘲笑していた。

下手に口出しするものじゃないな、と感じたノアは、その様子を静かに見守った。
にやけた笑いを浮かべながら、ディヴァイアが頭上からメドゥーサ達のいる太枝に飛び降りた。
枝が太すぎたのか、ディヴァイアの着地が静かだったからなのかはわからないが、枝はピクリとも揺れ動かなかった。

ゆっくりと体を起こすと、ノアに気付き、丁寧にお辞儀をした。
「はじめまして、天の姫君。
私はディヴァイアと申します。」
「ど…どうも…。」
敵のハズなのにまったく殺意を感じないこの男に、ノアは少々戸惑った。
そんなノアを余所目に、ディヴァイアは彼女に近付き、膝をついた。
そして、そっと彼女の手を拾い…
「どうぞ、お見知りおきを…。」
と・いうと、優しくノアの手の甲に唇を寄せた。

ノアは突然のことに何が起きたか理解できなかった。
…が、メドゥーサの行動は素早かった。

唇が触れるや否や、瞬時に拳を前に突き出した。
しかし、ディヴァイアは咄嗟に後ろに飛び跳ね、紙一重に拳をかわした。

「おやおや〜。あっぶないですねぇ？」
しかし、ディヴァイアは相変わらず嘲笑している。
「何しにきたｯ!!てめぇ…目障りだから、とっとと失せろ!!」
メドゥーサの罵声が飛ぶ。
ようやく、状況を読めたノアは顔を真っ赤にし、拳を震わせた。

剣があったら…叩き斬ってやりたい…

そんな2人を尻目にディヴァイアは口を開く。
「まぁまぁ、落ち着きなさいよ。『いいお話』…。持って来たんですよぉ？」
メドゥーサの睨みがさらにきつくなる。
ノアも一緒にディヴァイアを睨み付けた。

そんな2人を、ディヴァイアは鼻で笑った。

「『メドゥーサ』の過去の話…。聞きたくありません??」

…!!…

メドゥーサの眼光が見開かれた。
何も言い返せない…。


冷たい風が、彼らの頬を叩く…。