君色
「……私、頑張って髪を伸ばしたんだよ?」



英里が小さな声でボソッと言っていたけど、時折、通る自動車の音でその声は掻き消されてしまった。





「ごめん、聞こえなかった」





「う、ううん///何でもないの。それより、たっちゃん、早く教室に行かないと」





………そうだ、忘れていた。




もうすでにチャイムは鳴っている。





入学式初日から遅刻は良い印象を与えないだろう。





「やっべ……急がねぇと」





オレは英里と正門の前で別れると、そのまま下駄箱に直行した。





新しい靴箱に自分の靴を入れ、上履きに履き替える。





一年の教室は確か、このまま廊下を突き当たって行けば着くはず………。





まさか、君とまた会えるなんて思ってもいなかったんだ……。





オレと千華が出会ったのは、偶然でも必然でもなくて……、きっと運命なんだ………って。





桜の花びらが二人に贈ってくれた幸せ。




オレはそう信じてる。




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