spring snow

「失礼いたしました。
私は淡雪お嬢様の執事を務めさせていただいています渋谷圭と申します。」
「渋谷…？執事らしくない名前だな。」
創志は思わず笑った。
「よくそう言われます。
飯塚様、こんな場所で立ち話もなんですから、中に入られませんか？
お嬢様もお待ちになられておりますので。」
圭は淡雪が店の入り口で待っているのを見て、創志を促す。
「創志で良い。
その前にあの子どうしたんだ？」
創志は淡雪を指差し、圭に聞く。
「どうしたとおっしゃいますと…？」
「あの子、さっきから何もしゃべんねーんだよ…。
ただ指を動かすだけで…。」