spring snow
 その後すぐに、私はお嬢様のお部屋におりました。
 お嬢様はお部屋の人形で遊ばれておりました。
 (どうしてお嬢様は、言葉を喋られないのだろう?)
 お部屋で遊び始めてから…。
いえ初めてお会いした時から、私はお嬢様の声を聞いていなかったのです。
 「お嬢様…。」
 私は、お嬢様に声をかけてみました。

 お嬢様は、私の声にも聞こえずに遊ばれておりました。
 (もしかしてお嬢様は聞こえていらっしゃらない?)
 お嬢様の様子に、私は不安に思い始めました。
 「圭。」
 お部屋の扉が開き、父さんが顔を出す。
 「父さん…?」
 私は、扉の方へ体を向けたのです。
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