ファイブベル
そんな晋也の内面にまだ気付かぬまま、美弥はどこか混沌として考えていた。



――みんなはそうだよね……でも私は……



「だろ!結局あんたらにはわかんないよ!」

声を荒げて、晋也はきっと彼らを見据えた。

「どうせあんたらはずーっと光の中で生きてきたんだろ。脚光浴びて、光り輝く自分を疑わないで生きてきたんだろ。俺とは違う。だからわかるわけないんだよ!」
 
言い切る晋也の言葉に、美弥は自分の脈が強く打つのを感じていた。
それは久しい感情。

心臓が早鐘を打つ。

息が詰まりそうだ。


――ああ、この子も……自分と同じ……


「美弥お姉さま?」

美弥の異変に気付いた伶奈の小さな問いかけも、今の彼女には届かない。



トランス。

フラッシュバック。

頭がぐらぐらする。



「そうだな」




沈黙の一陣を断定音が切り裂いた。

とぼけたようだが、どこか力強いその声で、美弥は引き戻された。

「俺もそれには賛同するなぁ」

遠くに座し、もう一度、晋也に向かって肯定の意を表すると、修二は煙草に火をつけた。

「ちっ、ちょっと!井上くん!?」

正気に戻った、美弥の頭は状況を察して講義の声を上げさせた。

「なに肯定しちゃってるんスか!井上先輩!」

「そうですわよ!いのっち!」

続けて、祐介、伶奈も異論を唱える。

卓也だけは状況を静かに見据えていたが、

「おい、修。それじゃ、こいつら納得しないぞ」

助け舟を出すようにただそう言った。
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