ファイブベル
偶然か、必然か、ここに集った五人、唯一の共通点こそが、この身に有り余る自信というやつである。

口で人一倍文句をたれながら、その分人並み以上に“雑務”をこなす。

生徒会選抜競争率が並はずれて高い、ここ西浅見高校ならでは、と言ったところか。


そうでなければ、ここの生徒会は勤まらない。


そういった気概があるかどうかは知らないが、自分のスタイルを突き通すことに掛けて、現生徒会役員の五人は、すこぶる矜持が高い。

まさに自分自身に対する、確固たる心構えである。


「まあ、冬、あの一週間をこなしたおまえらなら、そういう態度にでるとは思ったがな」


顧問が襟元をかきながら言った何気ない言葉。

しかし、その何気ない言葉で、それまで余裕でいた五人はすぐさま硬直した。

「あの地獄の一週間ね…」

ぽつりとそうつぶやいて、修二は明後日の方向に視線を泳がせた。

「西高生徒会、闇の恒例行事、北国某所雑務」

卓也の唱えた仰々しい題目に、祐介は黙って身を震わせた。

というのも、件の“行事”で最大の被害をこうむったのは、かくいう松崎祐介その人であったからに相違ない。

四ヵ月以上経った今でさえ、悪夢にうなされかねない程で、
「もう北上するのはまっぴらだ!」と本人は豪語している。

それに関しては他のメンバーも同意見だろう。

「ち、ちょっと、やめてよね!」

「そうですわよ!思い出すだけで身の毛もよだちますわ」

女性陣の上げた非難の声を浴びて、顧問は困ったように襟首をかいた。

「やぶ蛇だったかな…」

「相当ですね。裕なんか、絶句してますし」

やや刺のある言い方をして、卓也は自分のことはていよく棚に上げた。

「ともかく、あとは任せた!例の一年生は、保健室だから」

「え!先生、立ち合うんじゃ、ねーの?」

ようやく祐介は正気をとりもどし、抗議の声を上げた。

「俺これから出張なんだわ。すまん。そんじゃ、あとよろしく」

そう言うなや、後ろ手で戸を開いたかと思うと、佐奈山顧問はさっと廊下に出て、ぴしゃりと戸を閉めた。
こぎみよい足音さえ聞こえた。

「相変わらず、フットワークいいわね」

美弥の呟き。他、四人は、ただ、うんうんと頷くに止めた。
< 6 / 12 >

この作品をシェア

pagetop