ファイブベル
偶然か、必然か、ここに集った五人、唯一の共通点こそが、この身に有り余る自信というやつである。
口で人一倍文句をたれながら、その分人並み以上に“雑務”をこなす。
生徒会選抜競争率が並はずれて高い、ここ西浅見高校ならでは、と言ったところか。
そうでなければ、ここの生徒会は勤まらない。
そういった気概があるかどうかは知らないが、自分のスタイルを突き通すことに掛けて、現生徒会役員の五人は、すこぶる矜持が高い。
まさに自分自身に対する、確固たる心構えである。
「まあ、冬、あの一週間をこなしたおまえらなら、そういう態度にでるとは思ったがな」
顧問が襟元をかきながら言った何気ない言葉。
しかし、その何気ない言葉で、それまで余裕でいた五人はすぐさま硬直した。
「あの地獄の一週間ね…」
ぽつりとそうつぶやいて、修二は明後日の方向に視線を泳がせた。
「西高生徒会、闇の恒例行事、北国某所雑務」
卓也の唱えた仰々しい題目に、祐介は黙って身を震わせた。
というのも、件の“行事”で最大の被害をこうむったのは、かくいう松崎祐介その人であったからに相違ない。
四ヵ月以上経った今でさえ、悪夢にうなされかねない程で、
「もう北上するのはまっぴらだ!」と本人は豪語している。
それに関しては他のメンバーも同意見だろう。
「ち、ちょっと、やめてよね!」
「そうですわよ!思い出すだけで身の毛もよだちますわ」
女性陣の上げた非難の声を浴びて、顧問は困ったように襟首をかいた。
「やぶ蛇だったかな…」
「相当ですね。裕なんか、絶句してますし」
やや刺のある言い方をして、卓也は自分のことはていよく棚に上げた。
「ともかく、あとは任せた!例の一年生は、保健室だから」
「え!先生、立ち合うんじゃ、ねーの?」
ようやく祐介は正気をとりもどし、抗議の声を上げた。
「俺これから出張なんだわ。すまん。そんじゃ、あとよろしく」
そう言うなや、後ろ手で戸を開いたかと思うと、佐奈山顧問はさっと廊下に出て、ぴしゃりと戸を閉めた。
こぎみよい足音さえ聞こえた。
「相変わらず、フットワークいいわね」
美弥の呟き。他、四人は、ただ、うんうんと頷くに止めた。
口で人一倍文句をたれながら、その分人並み以上に“雑務”をこなす。
生徒会選抜競争率が並はずれて高い、ここ西浅見高校ならでは、と言ったところか。
そうでなければ、ここの生徒会は勤まらない。
そういった気概があるかどうかは知らないが、自分のスタイルを突き通すことに掛けて、現生徒会役員の五人は、すこぶる矜持が高い。
まさに自分自身に対する、確固たる心構えである。
「まあ、冬、あの一週間をこなしたおまえらなら、そういう態度にでるとは思ったがな」
顧問が襟元をかきながら言った何気ない言葉。
しかし、その何気ない言葉で、それまで余裕でいた五人はすぐさま硬直した。
「あの地獄の一週間ね…」
ぽつりとそうつぶやいて、修二は明後日の方向に視線を泳がせた。
「西高生徒会、闇の恒例行事、北国某所雑務」
卓也の唱えた仰々しい題目に、祐介は黙って身を震わせた。
というのも、件の“行事”で最大の被害をこうむったのは、かくいう松崎祐介その人であったからに相違ない。
四ヵ月以上経った今でさえ、悪夢にうなされかねない程で、
「もう北上するのはまっぴらだ!」と本人は豪語している。
それに関しては他のメンバーも同意見だろう。
「ち、ちょっと、やめてよね!」
「そうですわよ!思い出すだけで身の毛もよだちますわ」
女性陣の上げた非難の声を浴びて、顧問は困ったように襟首をかいた。
「やぶ蛇だったかな…」
「相当ですね。裕なんか、絶句してますし」
やや刺のある言い方をして、卓也は自分のことはていよく棚に上げた。
「ともかく、あとは任せた!例の一年生は、保健室だから」
「え!先生、立ち合うんじゃ、ねーの?」
ようやく祐介は正気をとりもどし、抗議の声を上げた。
「俺これから出張なんだわ。すまん。そんじゃ、あとよろしく」
そう言うなや、後ろ手で戸を開いたかと思うと、佐奈山顧問はさっと廊下に出て、ぴしゃりと戸を閉めた。
こぎみよい足音さえ聞こえた。
「相変わらず、フットワークいいわね」
美弥の呟き。他、四人は、ただ、うんうんと頷くに止めた。