ファイブベル
そしてカーテンを無造作に開くと、ベッドに伏してあるであろう彼に、祐介は声をかけた。

「そこの少年ちょいといいかな」

ふざけた口調に布団をかぶってうずくまっていた少年は顔を上げた。

そして、不機嫌な顔で不敬の闖入者(チンニュウシャ)を見た。

「写真よりも可愛らしい顔してますわね」

誰に言うわけでもなく、伶奈は感心したように、自慢のプラチナブロンドの髪を指先でいじった。

本人は、地毛で、おまけに自分はロシア人の血が混じっていると主張するのだがその真偽は知れず、祐介などははっきり、虚偽だという。

祐介は彼女の灰色の瞳すらカラーコンタクトだと思ってやり過ごしている。

それは工藤伶奈の経歴を慮ってのことで、祐介は彼女のお嬢様ぶりっこに、やや不信を抱いているせいでもあった。

しかし、伶奈の顔のつくりは確かに欧米人。
あるいは西洋人形(ビスクドール)のごとく端正だ。



そんな彼女が可愛いというのだから、目の前の少年の顔はたしかに整ったものであった。 



「なんだよ、あんたら」



美少年には不似合いな台詞を吐いて、彼は訝しんだ。

「西浅見高校生徒会役員よ。まあ、詳しい事情は生徒会室で」

美弥が言うなやいなや、三人は布団に包んだ少年を軽がると抱えて、保健室から連れ出した。


つまりは拉致(ラチ)敢行!


少年の悲鳴が廊下にこだましたが「生徒会のやること」と誰も止めにはいらないのが、この学校の風情だとか――。






< 8 / 12 >

この作品をシェア

pagetop