探偵バトラー ~英国紳士と執事~
「そう落胆するな。事が終わればすぐに戻るつもりだ。

 儂がいない間、陣をそなたの世話役につけよう。何かあればこやつに命じるが良い」

 その台詞を聞いた瞬間、頭が真っ白になり、オレの全機能がフリーズした。

「陣。ロシュツ卿の身の回りの世話、そなたに確(しか)と頼んだぞ」

 唐突にそう告げると、絵理の父はその場で固まるオレの肩をぽんと叩き、にやりと笑った後に真面目な顔で念を押した。

「よいか。彼奴に対し、間違っても変な気を使ってはならぬ。思ったことがあれば、そのまま素直に言うが良い。解ったな」

 真意が全く解らないが、頷いておかないとお武家様に切り捨てられそうだ。

 オレは言われるまま、油の切れたブリキ人形のように頷いた。
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