探偵バトラー ~英国紳士と執事~
 さっさと他に彼女でも作った方がいいんだろうか。

 唐突にそんな考えが浮かんだ。

 思えば、オレは絵理のことで一喜一憂しすぎなんだ。既に公認の許婚(いいなずけ)がいる相手をいつまでも想っていたところで、その先に何があるのだろう。

 今だって、ロシュツ卿と楽しそうに話していて、オレの事なんか気にも留めていない。

 元々、執事なんかいなくても身の回りの事は全部一人でやってきた女だ。いなくなったところで、困りもしなければ寂しさも感じないんだろうな。

 酷く不安定な心を乗せて、高級車は高速道路に入っていった。

 いかん、運転に集中しなければ。ドライバーというのは、考えている以上に任の重い仕事なのだから。

 神経を後部座席から切り離し、アクセルを踏み込んだ。外の風景が勢いよく流れていく。

 この苛々も、外の風景と一緒に振り切ってしまえればいいのに。

 だけど実際はそうもいかなくて、不満はぴったりとオレを追跡したまま、御剣の屋敷まで同行する事になったのだった。
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