探偵バトラー ~英国紳士と執事~
「ロシュツ卿。絵理様。紅茶をお持ち致しました」

 扉を開けて恭しくお辞儀をし、顔を上げたところでオレは思わず固まった。

 目に入ったのは二人の男女。

 一人は愛する我が主。

 もう一人は今まさに服を脱ぎ捨てた中年紳士。肉体美の股間を彩る赤ビキニが形容し難い異彩を放っている。


「ありがとう。君の淹れる紅茶は絶品だと、レディ・エリから聞いていたところだよ」


 ぽひゅん。


 全ての異様を無視した台詞を爽やかに投げかける露出狂に、オレの中で何かがショートした。

「ふ……」

「うん? どうかしたのかね?」

「服を着ろおぉおぉぉおっ!!
 絵理の眼前で何素ッ裸晒しとるんだこのド変態ガっ!!!!!!!」

 こんなカオスな状況で、紅茶だけは取り落とさなかったという偉業を成し遂げたオレは賞賛に値すると思う。
< 16 / 32 >

この作品をシェア

pagetop