探偵バトラー ~英国紳士と執事~
「これでも、人を見る目にはそれなりにあるつもりだよ。引き受けてくれるね?」

 トドメにもう一度言われて、ついにオレは返答を余儀なくされた。

 背中を流れる嫌な汗とは裏腹に、顔の筋肉は清々しい笑顔を作る。


「喜んで♪」


 こうなったら自棄である。変態だろうが魔除けだろうが伝説だろうがこけしだろうがどんとこい。これしきの事に怯んではこの先戦国姫の執事など務まらない。毒を食らわば皿まで。

 この仕事が成功したら「娘の婿に相応しい男はそなたしかおらぬ!」とかいう展開希望。うん、無理なのはわかってるけどね!

 ささやかな現実逃避くらいはさせてくれ。

「君ならそう言ってくれると思っていたよ」

 ロシュツ卿は微笑み、改めて右手を差し出した。オレはその手をしっかりと取り、固い握手を交わした。

 その様子を静観していた絵理だったが、意を決したように口を開いた。
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