探偵バトラー ~英国紳士と執事~
「時に、陣よ」

 唐突に名を呼ばれ、思わず心の中で身構える。その呼び方に、違和感を覚えた。以前は確か、オレの事を草薙殿と呼んでいたはずなのだが。

「はい」

「あまり畏まらずとも良い。この場にいるのは我らだけだ。普段どおり、楽にせよ」

 ソンナコトヲイワレテモ。

 確かに、絵理と二人の時は敬語など使わない。しかし、オレはあくまで絵理の使用人。第三者がいる時は、それなりの礼節を持たなければいけない。

「ですが、旦那様のご友人をお迎えするのに、それではいささか問題が」

「奴と儂は長い付き合いだ。必要以上に体裁を気にする必要はない。それに、儂はそなたの事をいたく気に入っておるのだ。他の者がいない時は、使用人らしく振舞わずとも良い」

 ……そういうものなのだろうか。
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