スケベの季節
幽州、黄巾賊と対峙する公孫瓚の軍営に、静かなどよめきが広がっていた。
「なんなのだ、あの集団は?」「なんでも殿と旧知で、加勢にかけつけてくれたそうだが・・・」「おそろしい奴らだ。一人、本物の女子っぽいのもいるが・・・」「ああ、あの三人と一緒ということは、あいつも間違いなく・・・」
公孫瓚軍の兵たちが、新たに仲間に加わった一団を遠巻きにして、ひそひそと言葉を交わす。そんな周囲の様子をまったく気にするでもなく、劉備一行は公孫瓚に指定された軍営の敵側にもっとも近い軍営場所に向かっていた。
「なんか公孫瓚の兄貴、ドン引きしてたな」
不審そうな劉備を、
「あまりにも綺麗になって現れたから、びっくりしたんだろう、きっと。まあ良かったじゃないか、こうして軍に受け入れてもらえたし、手柄を立てれば推挙すると約束までしてくれたんだから」
と関羽がたしなめる。彼らの感触としては、公孫瓚は「コッチの人」ではなかった。
「でもさ、なんで賊軍は黄色いほっかむりとか被ってるわけ?戦なんだから、兜被ったほうが良くない?」
ベアトリクスが三人に言うと、劉備と関羽が顔を寄せ合い、
「被るというと・・・」「なるほど、確かに確かに」とひそひそ話を始めた。
そこに「なになに、ねえ」と張飛も顔を近づけるが、すぐさま「もう、兄貴たちったら!イジワルなんだからぁ!」と恥ずかしそうに顔を赤らめ、両手を振り上げて怒ってみせた。
劉備と関羽はキャッキャッと笑いながら追いかけてくる張飛から逃げ惑っている。
ベアトリクスは、
(うぜえ・・・うぜえ上にキモい。でもなぜだろう、うざキモいのに、私の心のどこかで、あれに反応する部分がある・・・私も、ダークサイドの人間と言うことか。フフ・・・)
と翳りある微笑をもって彼らを見つめた。

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