スケベの季節
公孫瓚軍と黄巾賊の戦闘が開始されたのは、劉備一行が到着した翌日だった。
最前線に配置された劉備一行は、突撃の号令が下されると、友軍の誰よりも速く敵陣に切り込んだ。屈強な男たちの争いの中、ベアトリクスは張飛に肩車されて、戦場に挑んだ。
「いいかみんな、昨日打ち合わせしたとおり、あいつらはほっかむりを取られたら戦う意味を無くしてしまう!ぶん殴ってでもほっかむりを毟り取るんだ!」
劉備が大声を放った。それに関羽と張飛は「おう!」と勇ましく答え、ベアトリクスは「私、女の子だから、男の人のほっかむりとか毟っちゃうのは、恥ずかしいなぁ・・・」と自分のお腹の辺りにある張飛の頭を指先でぐりぐりした。
「なに言ってんだよ!初対面の印象が大事って言ったのお前だろ!?だったら、あいつらのほっかむりを素敵な笑顔でむしりとってこそ、恋の勝利だろう」
と頭をぐりぐりされている張飛が声をかけた。
「そう、そうだよね!よしっ、あの恥ずかしがり屋さんたちの、ほっかむりを剥いちゃうぞ!」
ベアトリクスが気を取り直して叫ぶと、今度は張飛がキャッと悲鳴を上げて顔を手で覆った。
「おいら恥ずかしくて顔から火が出ちゃいそうだ!でも、これもオトコ帝国復興と、おいらたちが歴史に名を刻むため!ほっかむりどもよ、覚悟しろ!」
張飛は顔から手を離すと、得物である蛇矛を振り上げ、眼前に迫る黄巾賊を威嚇した。

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