スケベの季節
しばらくベアトリクスは、化粧品を手に、自分を囲んで座る三人の男たちの間を行ったり来たりしていたが、やがて、
「よしっ、完成!」
と、化粧が終わったことを朗らかな声で告げた。
「どれどれ・・・」
男たちが手鏡で自らの顔を確認する。
真っ白に塗りたくられた地肌、唇の面積を超えて溢れ出した紅、なにを意識してチョイスされたのか青のアイシャドウ・・・
彼らはそこに、色の暴走に蹂躙された自分を発見したのだった。
ベアトリクスの偏った美学の業であったが、男たち三人には、以外にも高い評価で受け入れられた。
「やべえ、また一つ別のステージにたどり着いた感があるぜ」
「拙者、化粧など女のする女々しいものだと思っていたが、いやはやこれは」
「嗚呼、綺麗だッ・・・!なんでだろう、うれしいはずなのに、おいら涙が出ちゃうよォ・・・!」
ベアトリクスはうれしくなって、思わず目じりにこぼれた一粒の涙をぬぐうと、とびっきりの笑顔で三人に言った。
「さあ、綺麗になったあなた達を、歴史に見せつけてやりましょう!」
彼らは意気揚々と旅を再開した。


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