年下ダーリン
「まー、それは仕方ないね。恋だから」



私はちんぷんかんぷんな答えになってない依子の返事に、少し口をとがらせた。




「それ、答えになってない」



依子は、急に驚くほど目を見開いて、フッと口元を緩めた。



「恋は答えなんてないし、経験積んでも分かんないの」



「答えがないって……」



一気に不安になった。
大嫌いな勉強も、参考書とか頭がいいヤツの答案見れば、そこに必ず答えが載っている。大事な勉強でさえも、恋よりは簡単なのだ。
だって、答えがあるんだから……

正しいことが分からない

どうやって行動すればいいか……まったく分からない




私の不安気な気持ちが通じたのか、依子は突然芝生の上に寝転がった。


「ちょ…!!」


「りん」


依子は寝ころんで上を向いたまま、私の名前を呼んだ。私が返事の代わりに顔を覗き込むと、依子は空から私に視線を移した。




「恋はね…自分信じて行動することが、すべてのカギを握ってるんだよ」



「カ、カギ……?」



「正しい答えなんて誰も知らない。だけどね、それは人それぞれ違うから、言えないだけ。自分自身の答えを導きだすすべては……」



「『自分を信じて行動すること』?」




依子はニコッと笑って、座りなおした。意外と芝生の上って気持ちいね、そう言って笑いながら。依子につられて、私もほほ笑みを返したが、頭のなかには、その依子の言葉がグルグルと回っていて、なかなか消えてくれなかった。
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