虹が見たい理由
プロローグ
「悪循環。」
茨は言った。
私は、降り続く雨の音に耳を澄ます。
「何が。」
亜利哀は尋ねる。
傘をくるり、と回して私の前を歩く茨は答えた。
「人って悪循環。」
溜め息と一緒に零した言葉。
「…そうしないとやっていけないんじゃないかな?」
私は言う。
「まぁ。少なくとも、あたし達は、悪循環してる。」
含み笑いをする亜利哀。
「虹、出ないかな。」
私は雨が振る空を見上げる。
黒い雲は、青い空を覆い尽くす。
「何で?」
亜利哀は聞く。
「教えて。あたし達が悪循環しないために。」
虹が見たい理由。