マーブル色
ある6月13日
「くぅーっ!!
早く行くよーっ!!」
「はぁーいっ!!」
部屋にあるドレッサーの前から立ち上がった”くぅ”こと、麻桐空(あさきりくう)はかばんを手に階段を駆け下りた。
「早くしなさい!!もう遅刻するわよ。」
「わかってるって。」
「まったくどうしてあんたって子はそんなにのんびりやさんになってしまったんだか。」
「お母さんに似たんでしょ?
もういまさら直んないって。」
「まあ、なんてことを言うの!?」
呆れながらも急かしてくる母に、空は靴を履きながら反論した。
「まあまあ2人とも!!
おばさん、空ののんびりやさんは今に始まったことじゃ無いし、それが空のかわいいところなんだから。」
「そうだそうだぁ!!
雅の言うとおりだぁーっ!!」
「こらっ!!くぅは調子に乗らないのっ!!
あんたはもうちょっと焦るという気持ちを持ちなさい!いつも時間ギリギリな行動ばかりして…。」
すかさずフォローに入りつつも、お叱りをしてきたのは、近所に住む幼馴染の湯河雅(ゆかわみやび)。
学校がある朝は毎日、空を迎えに家までやってくる。空にとっては頼りになる姉の様な存在だ。
「えぇ~っ。
雅までそんな事言わないでよ。のんのんマイペースライフ!!これ、わたしのモットーだよ?
急いだって何も得に「あぁ~っ、はいはいはい!」」
「「…………。」」
空の言葉を遮った母の言葉に空と雅は振り返る。
「あんたのその話は耳にたこができるほど聞いたわ。と・に・か・く!!今は急いで学校に行ってきなさい!!」
「ちぇ~っ。」
「はいはい、いくよ?くぅ!!」
玄関で靴を履き、空と雅は母に振り返った。
「「いってきます!!」」
「はい。いってらしゃい。」
扉を開けて外に出る。
そう、毎朝繰り返されている麻桐家の光景だ。