first love【完結】
「……一生?どうしたの?」


もうすぐリレー始まるのに……。 


「亜紀、チョット来て?」

校庭と観客席の間にはロープが張られていたため、ロープ越しに一生はあたしを呼んだ。


呼ばれたあたしは女子生徒達の痛い視線を受けながら一生に近付いていく。


「耳貸せ」


一生の前まで行くと、一生は真剣な表情を見せた。


え?“耳貸せ?” 


「どういう……――?」


一生は言葉を遮るようにあたしの右腕を引っ張った。

突然腕を引っ張られよろけたあたしをパッと抱えると、 


「俺あいつに絶対負けないから。だからもし俺が勝ったら……俺の言うこと聞け」


一生はあたしの耳元でそっと囁いた。 


耳元で微かに感じる一生の吐息で一気に体が熱を帯びる。


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