蒼い月

「ただいま~」

「あら、おかえり。
今日は早かったのね?」



あのあと、のんきに部活なんかに


行けるはずもなく


具合が悪い、という理由で休んだ。



「うん。
今日は早く終わったんだ」



嘘。


いつばれるかも分からないような


下手な嘘。


でも今のあたしに


上手に嘘なんか考えてる


暇なんて当然なくて。



「もうすぐご飯だから...
って、飛鳥?」

「ごめん、食欲ないから」

「でも何か食べないと...
お母さん、持って行こうか?」

「ううん、いい。もう寝るから。
おやすみ」

「えっ...!
ちょ..っ、飛鳥!?」



あたしはお母さんの声を


無視して自分の部屋に


倒れこんだ。


眠くもないのに、


明かりを消してベットに入る。


別に寒いわけでもないのに、


厚めの毛布をかける。


頭の中に浮かぶのは2つ。



1つは...瑞穂のこと。


瑞穂はあんな人じゃないって


思ってたし、考えてもいなかった。


仲が良かったわけじゃないけど、


特に悪いわけじゃなかったし


普通に友達って思ってた。



もう1つは瀬戸内のこと。


別にあんな奴好きじゃないし


みんなが騒ぐ理由も


あたしにはよく分からないけど、


でもなぜか瀬戸内の横顔とか


笑顔とか...


一気にフラッシュバックしてくる。


いろんなことが一気に


起こりすぎてついていけない


っていうのも事実。


あー!もう!


眠れない。


カチコチ...と


やかましい目覚ましだけが


耳に入ってきて、


耳ざわりだった。


あたしは布団をはがし、起きる。


すごく自分にイライラしてて。


あいつのことなんか


どうでもいいはずなのに。


そんな瀬戸内に振り回されてる


自分にも嫌気がさして。




満月の光だけが


あたしを見守っていた...
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