蒼い月
ガチャ・・・
「ただいま~!」
「あら、おかえり!
文化祭、どうだった?」
そう言ってパタパタと走ってきたのは
うちのお母さん。
明るさだけがとりえって感じ。
「うん、楽しかったよ!」
「そう。
演劇のほうはどうだった?
上手くいったの?」
「あ...うん。そのこと何だけど」
「ん?」
あたしはお母さんに
スカウトされた、ということを
話した。
「でもあたし...
どうしたらいいのかとか
全然分かんなくて。
夢は追っていきたいけど...
まだちょっと怖いってゆーか..」
「あせらなくてもいいのよ」
あたしの不安がつまった声を
落ち着いた冷静な言葉で止めた。
「あせらなくても
ゆっくり、ゆっくり考えればいい。
でもね..後悔しちゃ駄目よ。
はっきり言って、芸能界は
飛鳥にとって辛いところかもしれない。
でも、女優を目指すなら
夢を追いかけるなら
絶対に辛くなんかない。
いつまでもその気持ちを
持ち続けることが大事なのよ」
「気持ち...?」
「そう。
はじめは何も分からないところに
行くんだもの。
怖いのも当然だわ。
でもそこに踏み込む勇気が飛鳥に
あるのかしら?」
お母さんの言葉が
今日はやけに強く響いた。
「勇気...
あたし...!女優目指したい!」
「そう。
ならお母さんも応援するわ。
でも無理しちゃ駄目よ」
お母さんはそういうと
優しく微笑んだ。
「さ、もうご飯できてるわよ!」
「うん!」
あたしは夢を選んだ。
晴輝のように自分も夢を追いかけて
いきたい、そう思ったから。