【完結】先生との恋


病院に戻るのが面倒臭いと思ったことは何回かあったけれど、


戻らなくていいや、と思ったことはない。



「一応入院してるんだから抜け出さないで大人しくしてて欲しいんだけどね……」

高橋は横の椅子に座る。



「それは無理。
でも、前よりも焦ったりしてないじゃん。慣れてきたみたいだし……」



さっきだって連絡つかなかった割にはすごく落ち着いていた気がする。


さすがにいつもの事だと慣れてしまうよね。



あたしとしては、

ずっと焦っておいてもらいたいんだけど。



この慣れようなら、手術しなくてもいつかあたしの事なんかどうでも良くなっちゃうかもねー。


抜け出しても「いつもの事だし、そのうち帰って来るだろ」って。



慌てた電話もかかってこなくなるかも……。


「そんな風に見えました?
内心すっごく焦ってましたよ。
慣れるなんて事ないです」



僕が心臓バクバクして大変ですよ、とニッコリ笑う。

――高橋は、どれだけバクバクしたって命が危なくなったりしないくせに。



ま、慣れないなら良いけど。

って言うか焦った顔が見たいからずっと慣れないで居てほしい。



……あたしは部屋着を着ようてして、高橋を見る。

高橋は首を傾げながらあたしを見たまま。

部屋着を持ってあんたを見てる時点で気付いて欲しいんだけど。



「何してんの?この状況分かんないの?」

「え?」




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