【完結】先生との恋
そんな高橋から清水先生へと視線を戻す。
「……勇気が無いって言うか、見たくないだけなんで」
あたしはまだ、一回もできた傷を見てない。
清水先生の言うとおり、勇気が無いだけなのかもしれない。
消毒されてるし、痛みも感じているから手術された事は分かってるのに。
まだ手術された事を認めたくないのかもしれない。
傷を見たら、嫌でも実感してしまうと思うから。
わざわざ見ようとも思わない。
痛いから、体は手術された事を理解しつつあるけれど、心は理解してくれない。
したくない。
だから、こうやって消毒を行う時も目を瞑って傷から顔を背ける。
『……傷の消毒をさせていただきます』
本当は消毒は高橋がするはずだった。
回診に来た時も、高橋と看護師さんだけで。
『ちょっと待って。……清水先生は今日居ないの?』
消毒を始めようとするのを止めて、看護師さんに聞いた。