【完結】先生との恋
静かに足を止めて振り返る高橋。
少し驚いた顔をしているのは、あたしが久しぶりに自分から高橋に話しかけたから?
それとも、「高橋先生」と呼んだから?
「……どこに散歩に行ったのかは聞かないんですか?」
いつもならどこに行ったのか、って聞くのに。
あたしが誰にも行き先を告げずに散歩に出かけたことも、何も言わないし。
「どこに行こうが、もう発作は起きる事ないだろうし、先生には関係ないって事ですか?」
そこまで言って、ハッとする。
これじゃぁ、あたしが高橋に「気にかけてよ」って言ってるみたいじゃんか。
何言ってんの、あたし。
「やっぱり何でもないです、今の忘れてください」
あたしを見つめる高橋の視線から顔を逸らして、あたしは布団の中にもぐりこんだ。
今言ったことを、後悔する。
「……発作が起きなくても、岡本さんの行動は気になりますから」
しばらくして高橋の声が、届く。
何も答えずに布団に包まって固まっていると、高橋が遠ざかっていく音が聞こえた。