【完結】先生との恋
「……ここに入院している患者さんの中には、岡本さんみたいに軽度な心臓病じゃなくて重度の患者さんもいるんだ」
低く、落ち着いて話す高橋の声にあたしは耳を傾ける。
「……手術して治したいって思ってもできない人がいっぱいいるんだ。
その中で、手術して治るって言われてる岡本さんは凄く運が良いと思わない?」
高橋に問われるけど、あたしは返事をせずただ耳を傾けるだけ。
高橋はそんなあたしの様子を確認してまた口を開いた。
「出来るなら、治して欲しい。そして、元気に過ごして欲しい。
岡本さんは軽度だって言われてるけど、発作が起こればいつどうなってもおかしくない……。
生きていって欲しいんだ」
静かな部屋で高橋は必死にあたしに伝えようとしているんじゃないかっていうのは分かる。
眼鏡をかけてないからか、
真剣に思っていることを話しているからか、
高橋がしっかりとした 先生 に見えた。
……見えても認めないのがあたしの性格で。
「……執刀が高橋だからなぁー」
そんな事を言ってしまう。
高橋は困ったように笑っていた。
「……じゃ、次の質問ね?」
「……もう寝たほうが」
「起こされてまだ眠れない」
「……どうぞ」
一回時計を確認した高橋。