メイドが執事に恋をする
思いっきり目はあっちゃったけどそっと扉を閉めて急いで部屋を出ようとした。
「…おい。」
部屋から出ようとしたところで呼び止められた。
どんな顔して会えばいいのかわからなくて恐る恐る振り向いた。
ベランダの扉を開けて煙草をくわえたままの桜井さんがじっとあたしを見ている。
「そっちじゃ吸えねえからちょっとこっち来い。」
そう言ってまたベランダに戻って行ってしまった。
怒っても呆れてもいないみたい。
いつもと変わらない。
……。
『また逃げるのか』
と言われたことを思い出す。
あの冷たい瞳を思い出す。
正直逃げ出したい。
でも。
自分がどうしていいのかもわからないまま静かにもう一度扉を開いた。