Dear...
知子が家の前で縄跳びをしていた。

少し離れて、壁から半分顔を出して知子を見ている直人。

順調に回数を数えながら跳ぶ知子。

縁側で見ていた父。

何かの拍子で躓き転んだ知子。

膝を擦りむいた様だ。

父が立ち上がり駆け寄ろうとした時だった。

直人が駆け寄って来た。

父は二人の様子を見ている。

泣いている知子に直人が話し掛けた。

「どうしたの?ころんだの?」

言葉に成らない知子に直人が膝から流れる血に気づいた。

「こうすれば痛くなくなるんだよ。」

直人が両手を知子の膝に翳した。

「チチンプイプイ…。」

言葉に連動して、翳した両手が弧を描いた。

初めて聞く言葉に不思議な感覚を覚えた知子。痛みそっちのけで聞いていた。

「ね?痛くなくなったでしょ?」

「うんっ!でも、血が出てるの…。」

少量だが、血が流れていた。

ポケットに手を入れた直人は、知子に何かを差し出した。

ポケットティッシュと『キャラクター物』の絆創膏。

知子の膝から流れている血を拭き取り、絆創膏を貼って上げた直人。

「これで大丈夫だよ。」

「ありがとう。え~と、直人君。」

自慢気な直人の顔。

父は安心した。

「直人君も縄跳びしよっ!」

知子が縄跳びを差し出した。

「良いよ。知子ちゃんの見てるから。」

そう言って、壁に凭れ掛かり座る直人。

知子は、ゆっくりと縄跳びを始めた。

まるで、知子を見守るかの様に…。
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