スケベの季節(仮)
中庭にて

煩悩教師・桐野



日差しは夏の厳しさを忘れ、日毎に柔らかい秋のそれに変わりつつある。


ここ、私立葉月学園高等部の中庭のイチョウの葉も日増しに色づき、もう間もなく、地面に向かってフワフワと秋のワルツを踊りはじめることだろう………。


(──────秋、か。)


昼休憩の一時を中庭のベンチで過ごすのは、彼、桐野俊樹(きりのとしき)の日課となっていた。


昼食のサンドイッチと焼きそばパンを食べ終え、そして残りの時間を、コーヒーも煙草も嫌いな彼にとって唯一の嗜好品である500mlのりんごジュースを飲みながら過ごす。


この日も彼は、ストローを使わずにその甘みと酸味を堪能しながら、これから訪れる、人肌恋しい季節に想いを馳せていた。


(─────ヒトハダ────)


彼女いない歴3年の彼にとって、それはどこか、憧れにも似た響きを持っていた。その甘美な記憶を求め、思考は自然と過去へと旅立つ。


(やわらかくて、すべすべしてて、とんがってて、ポヨポヨしてて、そんで、あったかくて、エヘ、エヘヘ……………。)


3年3か月前の「出来事」を思い出していた彼の手は空中をいやらしく弄り、その口からはヨダレが一すじ垂れ下がっている…………。


そんな彼を訝しげに見やりながら、女子の一団が通り過ぎていった。




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