ダチュラな私。

否定をすると卑屈な人間に見えてしまうから、お世辞でもなんでも褒められたときは否定してはいけない。

だからこういうときは恥ずかしそうにしながらも否定はせずに、お礼を言うのがベストなのだ。


それにしても……聖羅と爽吾君は、いつまで歌ってるんだろう。

いつも通りの完璧な返答をした私は、男から目を離し視線をステージ上の二人に向ける。

ステージ上の二人はマイクを握りながら、片手で器用にデンモクをいじっていた。


……なるほど。さっきから歌いながら次の曲を入れていたのね。

そこまでして歌いたいのかと呆れていると。


「お世辞じゃないよ?」

そんな言葉と同時に。

私の右手を何かが握った。
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