ダチュラな私。
「あっ、本当だ。俺そろそろ行くわ」
そう言うと同時に離された手。
おさまっていく吐き気に安堵しながら、ふと向かい側のソファに座る人を見ると。
その人は歌本をめくっていた手をとめて、強制的に繋がれていた手にその視線を落としていた。
もしかして……見られてた?
その視線にそんな考えが浮かぶ。
もし見られていたなら、口止めしなきゃ。
この人も同じ学校らしいし、もし誰かにこのことを話されたら面倒なことになる。
だけど見られていたのか、いないのかなんてわからないし。
もし見られていないのに余計なことを言ってしまえば、墓穴を掘ることになる。
「またね、花ちゃん」
「あっ、うん。バイト頑張ってね」
私がそんなふうに頭を悩ませていると、男は立ち上がりそう笑顔を見せた。
私もそれに合わせて笑顔で手をふる。
“またね”は二度とないだろう。
そう、思いながら。