ダチュラな私。

あっ、聖羅が勝った。

私からはほぼ同時に海の中に飛び込んだように見えたけれど、海の中で仁王立ちしている聖羅と膝をついている爽吾君の様子を見ると、その結果は一目瞭然だ。

爽吾君もかなり頑張っていたけれど、最初に聖羅がリードしていたから仕方ない。むしろ、よくあそこまで追い付いたという感じだ。


シートの上に座って水を飲みながら、爽吾君の健闘を称えていると。

「俺らも行くか?」

斜め前に座っていた一成が振り返りながら立ち上がり、着ていた黒いパーカーを脱いだ。


別に、おかしいことではない。

海に入るのにパーカーを着たままの人なんて、滅多にいないんだから。

「う、うん……」

だけど私は立ち上がりながらも一成から目を逸らし、顔を見られないように俯いた。

暑さとは別の意味で赤くなっているであろう顔を、絶対に見られたくなかったから。
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