ダチュラな私。

サイテイな男



あの男が去ってから一〇分後。

「あの……」

聖羅と爽吾君の素晴らしいハーモニーが流れるなかで、私は向かい側のソファに座る人の隣に立って声をかけた。


この一〇分間。

どうしようかと悩んだのだけれど、とりあえず、素直に聞いてみようと思ったのだ。

この人が見ていたのか、いないのかはわからないけれど、私にとっては変な噂を流されるほうが面倒だし嫌だから。

それにもし墓穴を掘ってしまったとしても。

それをごまかす自信は、ある。


「なに?」

私の小さな声に反応して閉じられた歌本。

そして面倒臭そうな声と共に、ゆっくりとあげられたその顔。

私はその顔を見て、思わず息を呑んだ。
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